リタイア婦人 りゅうたま日記

リタイア婦人りゅうたまの日々のあれこれ

「中野のライオン」と田んぼのゴリラ

今「向田邦子ベスト・エッセイ」を読んでいます。

軽妙にして知的。昭和の時代に書かれた文章ですが、令和の今読んでもライブ感があってとても新鮮。名脚本家というだけでなく、名エッセイストでもあったのというのに納得です。


この本に「中野のライオン」というエッセイが収録されています。


“会社帰り、中央線の電車の窓から外を眺めていると、痩せた男性とライオンが家の窓べりにいるのを発見して驚愕。しかし周囲の乗客は皆無反応…。あれは幻視だったのか…。”


といった内容。これを読んだ時、私の小学2年か3年生の時の、不思議な体験がフラッシュバックしました…。


当時私は首都圏郊外に住んでおり、まだ自然が身近にたくさん残っていました。珍しい、白い蓮華ばかりが咲いている、ちょっとミステリースポット的な田んぼに行った時のこと。

S子ちゃんと花摘みをしていた場所から50mくらい先(たぶん…)に、大きな木が1本たっていました。

ふと顔を上げると、その木の影から、青のチョッキと青の半ズボンを身につけた、黒いガタイの良い生物がひょい、と出てきたのです!まるで服を着たゴリラのよう…。そしてそれは、力瘤を作るようなポーズで腕を上げ、ガニ股でのしのしこちらに向かってきました。

びっくりした私たちは、悲鳴をあげて

田んぼから逃げ出し…。

その後どうしたかの記憶は全くありません。S子ちゃんとはその後もしばしば会っていたけれど、それについて何か話した記憶もなし。


これは夢だったのか、現実なのか、はたまた夢と現実のハイブリットか…。あれから50年近く経ちましたが、今でも判然としません。


基本的にプラクティカルな人間なのですが、たまに旅館などで「んん?」という微妙な空気を感じることも。そんな時は「ここに来るまでどんなに仕事ツメツメでやってたか…それに高いお金払ってんから勘弁してよ!フンっ」とオバさんの憤怒パワーで結界をはってましたねw。


「中野のライオン」に後日談もあって、

件の男性とライオンは実在していたとわかり、男性とは対面も果たしたそうです。

しかし、奇矯な風景が眼前にあってもそれが見えなかった、見えても騒ぎもしなかった、向田邦子さん以外の乗客の存在が、結構ホラーだわ…。